序章: 不動産屋の裏側へようこそ

不動産屋での勤務経験は、まるで人生の縮図を覗き見るようなもの。物件を借りる人、貸す大家、管理する会社、それぞれの思惑が交錯し、時に笑い、時に驚くエピソードが生まれる。ここでは、元不動産屋勤務の視点から、賃貸住宅の裏話や人間ドラマを章立てで紹介する。鍵交換の裏技から警察沙汰のトラブルまで、リアルな賃貸の世界を紐解いていこう。

第1章: 鍵交換のグレーな実態

賃貸物件の鍵交換、実はオプションで5万円ほどかかるが、使われるシリンダーはたった2500円程度。初心者の私でも簡単に交換できた。やり方を覚えれば誰でもできる作業なのに、高額な料金で提供されるこのサービス。さらに、交換したシリンダーを他の物件で使い回す「リサイクル」も行われていた。安全性は?と聞きたくなるが、木製ドアや窓は力技で突破可能なため、ピッキングの方がよほど問題だった。こんな裏技、借り手は知らないまま契約するんだ。

第2章: NGリストとその理由

不動産屋では、大家が敬遠する「NGリスト」が存在する。楽器、ペット、高齢者、水商売、外国人。これらの入居者は、滞納やトラブルが起こりやすいとされる。特に外国人は、帰国されると家賃回収が不可能で、ゴミ出しルール無視や勝手な部屋改造、一人契約なのに住人増やすなど、問題が多発。水商売の人も生活リズムの違いから騒音トラブルに繋がりがちだ。夜勤の病院勤務者も似たような理由で敬遠される。賃貸住宅は、こうした人間模様の縮図そのものだ。

第3章: 警察沙汰のドラマチックな一幕

ある日、管理物件に薬物使用で警察に追われる男が、彼女の部屋に逃げ込んできた。警察が「ドアを壊していいか」と聞いてきたが、弁償しないと言うので大家は当然NG。そんな緊迫したやり取りの最中、驚くことに犯人は「暑いから」とアイスを買いに出てきて即逮捕! 薬物中毒者の突飛な行動に呆れた。彼女は彼の薬物使用を知らなかったと主張したが、真相は闇の中。賃貸物件は、こんな映画のような事件の舞台にもなる。

第4章: 生活保護と「も〇い」の裏事情

生活保護受給者の入居も一筋縄ではいかない。彼らは突然バックレることが多く、NPO法人「も〇い」が保証人だと、入居者が消えた後フォローしないため厄介。ホームレスが施設を拒否するのと同じで、支援があっても定着しないケースが多々ある。こうしたケースは、不動産屋にとってリスクの高い契約となるのだ。

第5章: 建築中の物件と新築の魅力

建築中の物件を案内し、入居が決まった経験はレアだった。コンクリートむき出し、道具が散乱する現場を歩くのは怖かったが、初めて住む人になりたいという客の希望は強く、こうした物件は決まりやすい。ただし、未使用ゆえに不具合が見つかっていないリスクも。ピカピカの新築に惹かれる人の心理と、裏に潜む未知のトラブル。不動産屋はそんなギャップの間を縫う仕事だ。

第6章: シェアハウスの人間ドラマ

シェアハウスもまた、賃貸の縮図。仲良し女性三人組が借りた物件は、退去時に負担を巡ってもめて解約。一方、元自衛官の男性ペアは長く仲良く暮らしていた。対照的な二組を見ながら、人間関係の脆さと強さを垣間見た。シェアハウスは、共同生活の喜びと軋轢が交錯する場所。退去時のドタバタは、不動産屋にとって日常茶飯事だ。

第7章: 騒音トラブルと管理会社の現実

個人的な経験として、狭いアパートに住んでいた頃、真下の階の学生がデカいコンポで低音を響かせ、騒音被害で引っ越した。隣人も注意しに行ったが効果は薄く、それを話して対処を頼んだ管理会社の担当者は「自分で言えませんか?」と投げやり。騒音問題は、当事者同士の直接対決で悪化しやすく、管理会社が間に入るべきなのに、対応はまちまち。結局、バランス釜の古いアパートからの解放も含め、引っ越しは正解だった。

終章: 賃貸住宅、人生の縮図

不動産屋勤務を通じて見たのは、ただの物件ではなく、そこに住む人々の人生そのもの。滞納、夜逃げ、警察沙汰、シェアハウスのドラマ、騒音トラブル。すべてが賃貸住宅という小さな空間に凝縮されている。不動産屋の裏側には、笑いあり、驚きありの人間模様が広がっている。この経験は、人生の多様性を教えてくれた貴重な一ページだった。